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【分散の基礎】分散剤の種類と選び方を徹底解説~粒子と溶剤に合った選定方法とは~

粒子や溶剤に合った分散剤を選定するのは難しいですよね。

一口に「分散剤」と言っても、様々な種類があり、それぞれ特徴や最適な用途が違います。

本記事を見れば下記が分かります。

  • 分散と分散剤の基礎知識
  • 分散剤の種類と特徴
  • 分散剤の選び方
    ※「溶剤・粒子の種類・粒子径」に合った選び方
目次

分散剤とは

粒子は多くの場合、凝集体(2次粒子)として存在しています。

この凝集体を、目的の粒子径(例えば1次粒子径)まで解砕し安定化させることを「分散」と言います。

分散剤とは、下図のような分散過程に作用し、粒子を分散させるのに役立つ添加剤のことです。

粒子分散の過程(濡れ→機械的解砕→分散安定化)

上記のような分散の過程についてはこちらの記事で解説しています。

一口に「分散剤」と言っても、具体的にイメージするものは業界によって異なります。

実際のところ、分散剤の定義が各社違ったりして、全体像の把握は困難です。

そこで、全体を網羅する「広い意味での分散剤」について、次の項で分かりやすく解説します。

分散剤の種類

分散剤を大別すると4種類

「広い意味での分散剤」を大別すると下記の4種類になります。

分散剤の種類(界面活性剤、高分子分散剤、増粘剤、シナジスト)

この中で、「界面活性剤」「高分子分散剤」「増粘剤」の3種類は、単純に「分散剤」と呼ばれることがあります。

どの添加剤を「分散剤」と呼ぶかは、業界・企業・部署・担当者によって違います。

「分散剤」とは具体的に何を指すのか、なぜその「分散剤」を使用しているのかを理解することは、より良い分散剤を選定する上で役に立ちます。

ちなみに上記の分類は、私の考えであり、分散剤の機能に注目して分類したものです。

世の中には、低分子と高分子に分ける考え方や、増粘剤やシナジストを分散剤に含めない考え方もあります。

1.界面活性剤

「界面活性剤」は、単純に「分散剤」と言われることもあり、業界によってはこれが「分散剤」そのものです。

「湿潤剤」「乳化剤」「低分子分散剤」と呼ばれることもあります。

「界面活性剤」は、例えば下図のように、分子中に親水基と疎水基(親油基)を持ちます。

界面活性剤のイメージ図

親水基は高極性の物質と仲が良く、疎水基は低極性の物質と仲が良いという特徴があります。

高極性と低極性の物質としては、例えば下記が挙げられます。

高極性の物質:水、高極性溶剤(低級アルコールなど)、無機酸化物など

低極性の物質:低極性溶剤(油・トルエンなど)、有機顔料、カーボンなど

「界面活性剤」は、高極性の物質と低極性の物質の界面に作用して、粒子の「濡れ促進」と「分散安定化」に効果があります。

例えば、下記のようなイメージです。

水中で界面活性剤がカーボンに作用する様子

「濡れ促進」:疎水性のカーボンに、界面活性剤の疎水基が吸着し、界面活性剤の親水基は外向きになります。結果的にカーボン表面は親水基で覆われる形となり、カーボンの親水性が上昇し、水に濡れやすくなります。

「分散安定化」:界面活性剤によっては、粒子表面に電荷を付与し、静電反発による分散安定化を狙えるものもあります。

分散安定化機構についてはこちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

2.高分子分散剤

「高分子分散剤」は、単純に「分散剤」と言われることが多く、業界によってはこれが「分散剤」そのものです。

「樹脂型分散剤」や「分散樹脂」と呼ばれることもあります。

「高分子分散剤」は、分子中に吸着部(アンカー)と溶媒和部を持ちます。

「高分子分散剤」には様々なタイプがありますが、例えば下記が挙げられます。

高分子分散剤の構造(直鎖、ランダム、くし型)

適切な「高分子分散剤」を選定できれば、吸着部が粒子に吸着すると共に溶剤和部が溶剤中に広がり、立体障害による分散安定化を狙えます。

分散安定化機構についてはこちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

「高分子分散剤」には界面活性剤と同じ効果を有するものもあり、濡れも促進できる場合があります。

なぜなら、高分子分散剤(直鎖型)の構造は、下図のように界面活性剤とよく似ているからです。

界面活性剤と直鎖型高分子分散剤は似ている

ただし、同じ重量あたりでみると、高分子分散剤の方が分子量が大きいため数は少なくなります。

そのため、濡れを促進する効果は高分子分散剤の方が低いです。

3.増粘剤(レオロジーコントロール剤・チクソトロピック剤)

「増粘剤」は、単純に「分散剤」と言われることもあり、業界によってはこれが「分散剤」そのものです。

「レオロジーコントロール剤」や「チクソトロピック剤」と呼ばれることもあります。

増粘剤は液中で軽く引かれ合い、下図のような3次元網目構造を形成し、液の粘度が上がります。

増粘剤の3次元網目構造

増粘剤は、高分子のものと、低分子(粒子状)のものがあります。

増粘剤の効果として正しいのは下記です。

  • 粒子に吸着し、静電反発や立体障害により分散安定化する
  • 粘度を上げることで、粒子の沈降速度を遅くし、分散安定化に繋がる

ただし、増粘剤の中には、増粘効果だけでなく、粒子に吸着するものもあり「高分子分散剤」としても分類できるものもあります。

「液の粘度を上げると粒子の沈降速度が遅くなる理由」や「粒子の沈降を防ぐ方法」については、こちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

4.シナジスト

「シナジスト」は「誘導体」「色素誘導体」「顔料誘導体」とも呼ばれ、「広い意味での分散剤」の中ではマイナーです。

下図のように、高分子分散剤が粒子に吸着するのを補助する効果があります。

シナジストの効果:高分子分散剤が粒子に吸着するのを補助する

シナジストによっては、粒子表面に電荷を付与し、静電反発による分散安定化を狙えるものもあります。

分散剤の選び方

【前提知識】「粒子」「分散剤」「溶剤」の親和性が重要

分散剤を選ぶ際は、粒子と溶剤との親和性を考える必要があります。

「粒子」「分散剤」「溶剤」の関係を図にすると下記です。

粒子・分散剤・溶剤の3つの関係性

増粘剤を除く分散剤は、粒子に吸着することで効果を発揮します。

分散剤と粒子の親和性が高いと、分散剤は粒子に吸着し易くなります。

そのため、分散剤と粒子の親和性は、高ければ高いほど良いです。

一方、分散剤と溶剤の親和性は高すぎても低すぎても良くありません。

分散剤と溶剤の親和性による挙動は下記です。

分散剤と溶剤の親和性別の挙動

1→5の順に「分散剤⇔溶剤」の親和性が高くなっていくとすると、

親和性1:不溶。そもそも分散剤が溶剤に溶けない。

親和性2:白濁。分散剤がミセルやエマルションを形成し、分散効果が発揮されない。

親和性3:分散効果低。分散剤の溶媒和部分が溶剤中に広がらず(分子鎖が丸まる)、分散効果が低い。

親和性4:分散効果大。分散剤の溶媒和部分が溶剤に広がり、分散効果が高い最適な状態。

親和性5:分散効果低。分散剤と溶剤の親和性が高すぎると、分散剤は溶剤側にいる方が安定で、粒子に吸着しにくい。

上記のように、分散剤は「粒子」と「溶剤」との親和性を考える必要があります。

ちなみに、分散剤と溶剤の親和性は、界面活性剤の場合HLB値、高分子分散剤や増粘剤の場合はSP値(HSP値)が参考になります。

ただし、HLB値は分散剤のカタログに載っている場合もありますが、SP値は基本的に載っていません。

実際は、次の項のような分類で分散剤を選ぶと良いでしょう。

「分散剤の用途」と「粒子径」別に分散剤を選ぶ方法

分散剤を「溶剤」と「粒子」別に分類すると、ほとんどが下記4種類の用途に分けられます。

  1. 「水系×低極性粒子」用分散剤
  2. 「水系×高極性粒子」用分散剤
  3. 「溶剤系×低極性粒子」用分散剤
  4. 「溶剤系×高極性粒子」用分散剤

低極性粒子の例としては、カーボンや有機顔料が挙げられます。

高極性粒子の例としては、無機酸化物(セラミックス)や金属が挙げられます。

ざっくりのイメージとしては、炭素だけで構成されている部分が多い程、低極性です。

ご自身の分散系が上記4種類のどれに分類されるのか判断し、該当する項目(下に記述)をご覧ください。

高極性溶剤をご使用の場合は、水系・溶剤系どちらのアプローチも有効な場合があります。

1.「水系×低極性粒子」用分散剤の選び方

粒子径(一次粒子径)別の分散剤の選び方は下記です。

1μm以上(ミクロンオーダー)

増粘剤が最適。高分子分散剤を追加するとより良い場合あり。

0.5~1μm(サブミクロンオーダー)

高分子分散剤と増粘剤が最適。界面活性剤やシナジストを追加するとより良い場合あり。

0.1~0.5μm(サブミクロンオーダー)

高分子分散剤が最適。界面活性剤やシナジストを追加するとより良い場合あり。

0.1μm以下(ナノオーダー・コロイド領域)

界面活性剤や高分子分散剤が最適。シナジストを追加するとより良い場合あり。

上記を参考に分散剤のカタログなどを見るか、「(分散剤種名)水系」又は「(粒子名)(分散剤種名)水系 」で検索して分散剤やその分散剤が得意なメーカーを探しましょう。

※具体的な分散剤例や分散剤メーカーについては今後記述していきます。参考文献もおすすめです。

2.「水系×高極性粒子」用分散剤の選び方

粒子径(一次粒子径)別の分散剤の選び方は下記です。

1μm以上(ミクロンオーダー)

増粘剤が最適。高分子分散剤を追加するとより良い場合あり。

0.5~1μm(サブミクロンオーダー)

高分子分散剤と増粘剤が最適。

0.1~0.5μm(サブミクロンオーダー)

高分子分散剤が最適。増粘剤を追加するとより良い場合あり。

0.1μm以下(ナノオーダー・コロイド領域)

界面活性剤や高分子分散剤が最適。

上記を参考に分散剤のカタログなどを見るか、「(分散剤種名)水系」又は「(粒子名)(分散剤種名)水系」で検索して分散剤やその分散剤が得意なメーカーを探しましょう。

※具体的な分散剤例や分散剤メーカーについては今後記述していきます。参考文献もおすすめです。

3.「溶剤系×低極性粒子」用分散剤の選び方

粒子径(一次粒子径)別の分散剤の選び方は下記です。

1μm以上(ミクロンオーダー)

増粘剤が最適。高分子分散剤を追加するとより良い場合あり。

0.5~1μm(サブミクロンオーダー)

高分子分散剤と増粘剤が最適。シナジストを追加するとより良い場合あり。

0.1~0.5μm(サブミクロンオーダー)

高分子分散剤が最適。シナジストを追加するとより良い場合あり。

0.1μm以下(ナノオーダー・コロイド領域)

高分子分散剤が最適。シナジストを追加するとより良い場合あり。

上記を参考に分散剤のカタログなどを見るか、「(分散剤種名)溶剤系」又は「(粒子名)(分散剤種名)溶剤系」で検索して分散剤やその分散剤が得意なメーカーを探しましょう。

※具体的な分散剤例や分散剤メーカーについては今後記述していきます。参考文献もおすすめです。

4.「溶剤系×高極性粒子」用分散剤の選び方

粒子径(一次粒子径)別の分散剤の選び方は下記です。

1μm以上(ミクロンオーダー)

増粘剤が最適。高分子分散剤を追加するとより良い場合あり。

0.5~1μm(サブミクロンオーダー)

高分子分散剤と増粘剤が最適。

0.1~0.5μm(サブミクロンオーダー)

高分子分散剤が最適。増粘剤を追加するとより良い場合あり。

0.1μm以下(ナノオーダー・コロイド領域)

高分子分散剤が最適。

上記を参考に分散剤のカタログなどを見るか、「(分散剤種名)溶剤系」又は「(粒子名)(分散剤種名)溶剤系」で検索して分散剤やその分散剤が得意なメーカーを探しましょう。

※具体的な分散剤例や分散剤メーカーについては今後記述していきます。参考文献もおすすめです。

分散剤メーカー20社の紹介

具体的な分散剤メーカー20社については、こちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

まとめ

「広い意味での分散剤」を大別すると、下記の4種類に分けられます。

分散剤の種類(界面活性剤、高分子分散剤、増粘剤、シナジスト)

分散剤を選ぶ際は、「溶剤」と「粒子」との親和性を考慮するのが重要です。

分散剤を「溶剤」と「粒子」別に分類すると、ほとんどが下記4種類の用途に分けられます。

  1. 「水系×低極性粒子」用分散剤
  2. 「水系×高極性粒子」用分散剤
  3. 「溶剤系×低極性粒子」用分散剤
  4. 「溶剤系×高極性粒子」用分散剤

上記4種類について、どの分散剤が良いかは上で解説しました。まとめると下記です。

スクロールできます
「溶剤種」
「粒子種」
一次粒子径
0.1µm以下
一次粒子径
0.1~0.5µm
一次粒子径
0.5~1µm
一次粒子径
1µm以上
水系
×
低極性粒子
界面活性剤
高分子分散剤
(+シナジスト)
高分子分散剤
(+界面活性剤)
(+シナジスト)
高分子分散剤
増粘剤
(+界面活性剤)
(+シナジスト)
増粘剤
(+高分子分散剤)
水系
×
高極性粒子
界面活性剤
高分子分散剤
高分子分散剤
(+増粘剤)
高分子分散剤
増粘剤
増粘剤
(+高分子分散剤)
溶剤系
×
低極性粒子
高分子分散剤
(+シナジスト)
高分子分散剤
(+シナジスト)
高分子分散剤
増粘剤
(+シナジスト)
増粘剤
(+高分子分散剤)
溶剤系
×
高極性粒子
高分子分散剤高分子分散剤
(+増粘剤)
高分子分散剤
増粘剤
増粘剤
(+高分子分散剤)

分散剤メーカーについてはこちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

1µm以上の粒子や、比重の高い粒子を使う場合は、沈降防止策が必要で、こちらの記事で解説しています▼

分散剤に頼らずに分散する方法や、分散剤以外に着目した分散方法については、こちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

特に、水系で0.1µm以下の粒子を使う場合は、静電反発による分散も有効で、上記の記事が参考になります。

参考文献

分散について学ぶのに役立つおすすめ本は、こちらの記事で紹介しているので是非どうぞ▼

1)小林敏勝・福井寛「きちんと知りたい粒子表面と分散技術」p.132等、日刊工業新聞社(2014)

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2)中道敏彦「図解入門よくわかる顔料分散」p.87等、日刊工業新聞社(2009)

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3)小林敏勝「きちんと知りたい粒子分散液の作り方・使い方」p.116等、日刊工業新聞社(2016)

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