粒子の分散には、分散機の選定が重要になります。
しかし、分散機は種類が多く、自身の分散系に合った分散機が分からないという方は多いのではないでしょうか。
本記事を見れば下記が分かります。
- 分散と分散機の基礎知識
- 分散機の種類と特徴
- 分散機の選び方
- 分散機メーカーとラボ機の一例
分散機の役割
粒子は多くの場合、凝集体(2次粒子)として存在しています。
この凝集体を、目的の粒子径(例えば1次粒子径)まで解砕し安定化させることを「分散」と言います。
分散機は、下図のような分散過程で、「①濡れ」と「②解砕」に効果があります。

上記のような分散の過程についてはこちらの記事で解説しています。
分散機の3つの分散原理【分散機一覧(分散機の種類)】
分散機の分散原理(解砕原理)は、「せん断」「衝撃」「キャビテーション」の3つがあります。
実際は、複数の分散原理を組み合わせた分散機があったり、分類が難しいものもあります。
当ブログでは、分かりやすくするために、下記の3つに分類しています。
1.せん断【分散機一覧】
「せん断」による分散は、下図のように「面と面をずらす」ことで、粒子を解砕します。

ここで言う「面」は様々な種類があり、下で解説する分散機によって異なります。
ちなみに、はさみで切れる原理が「せん断」です。
せん断時にかかる力は、「せん断応力」や「ずり応力」と呼ばれます。
「せん断応力」には下記の特徴があります。
・粘度が高い程、力が強い
・2面間の相対速度が大きい程、力が強い
・2面間の距離が短い程、力が強い
・2面間の接触面積が大きい程、力が強い
せん断系の分散機には、例えば下記があります。

2.衝撃【分散機一覧】
「衝撃」による分散は、下図のように「何かが衝突する」ことによって、粒子を解砕します。

何が、何に衝突するのかは、下で解説する分散機によって異なります。
衝突時にかかる力は、「衝撃力」と呼ばれ、下記の特徴があります。
・衝突速度が速い程、力が強い
・衝突物の質量が大きい程、力が強い
衝撃系の分散機には、例えば下記があります。

3.キャビテーション【分散機一覧】
「キャビテーション」による分散は、下記のメカニズムで作用し、分散機としては超音波ホモジナイザーが挙げられます。
超音波を液中に照射すると、液中に「高速な流れ」が発生。高速に流れる液中の、局所的に圧力の低い部分が気化し、気泡が発生する現象をキャビテーションと呼びます。キャビテーションによる気泡は、「発生・圧縮・圧壊」を繰り返し、これにより高温・高圧の反応場が液中に形成されます(図3)。
株式会社エスエムテー「超音波分散機器について」

また、一部の高圧ホモジナイザーは、「キャビテーション」も発生します。
分散機の選び方(目標粒子径と粘度の重要性)
下記理由から、分散機は「目標粒子径」と「粘度」で選ぶことをお勧めします。
- 分散系の粘度によって、使える分散機が限られる
- 分散機によって、到達できる粒子径が異なる
目標粒子径は、分散の目的によって大きく異なり、必ずしも1次粒子径とは一致しません。
一次粒子径より大きいこともあれば、粉砕により1次粒子径より小さいこともあります。
「目標粒子径」と「粘度」に適した分散機をグラフで表すと下記になります。
実際は、分散機の機種や条件によって性能が大きく異なるため、グラフから外れる場合もあります。
下記は当ブログの考えであり、分かりやすくするための、ざっくりとした分類とお考え下さい。

液体の粘度の目安は下記です。

次の項で、代表的な分散機について、詳細をご説明します。
ちなみに、「目標粒子径」と「粘度」以外に、分散機の選定で留意しておくべき点は下記です。
- スケールアップ性:ラボ機を選ぶ際にも、スケールアップがどの程度可能か確認。
- 生産性:生産性は高いか。分散時間やそれに付随する時間はどの程度か。
- コスト:生産性も考慮した上で、投資金額やランニングコストが合うか。
分散機の概要&ラボ機の紹介
ここでは、分散機の概要を知り、全体像を掴んでいただけたらと思います。
詳細は、各社のサイトでご確認ください。
ディゾルバー(ディスパー)
「ディゾルバー」は、「ディスパー」「ホモディスパー」「高速せん断撹拌機」「ハイスピードディスパーサー」と呼ばれることもあります。
せん断のかかる羽を、高速で回転させ分散します。
スターラーやプロペラミキサーよりも、分散力が強く、ラボでも簡単に試せます。
ラボ機の一例は下記です。
量産機は、ラボ機をそのまま大きくした様な物もありますし、タンクと一体型の物もあります。
良く勘違いされますが、せん断応力と相関が高いのは「回転数」ではなく「周速」です。
同じ回転数であれば、羽が大きい程、周速が速くなりせん断応力が大きくなります。
プラネタリーミキサー
「プラネタリーミキサー」は、「自転公転ミキサー」「遊星式攪拌機」と呼ばれることもあります。
2本のブレードが自転しながら公転することで、せん断により分散します。
卓上サイズのプラネタリーミキサーもあり、ラボ機として使えます。
また、下記のような「自転公転ミキサー」もラボ機の一例として挙げられます。
ブレードはありませんがプラネタリーミキサーと相関があると言われています。
練太郎はラボでも非常に簡単に試せます。
標準的なあわとり練太郎もおすすめです。
3本ロール
下記のように、ロールを回転させ、せん断で分散します。

ラボ機は例えばこちらが挙げられます。卓上のものはなく、それなりのサイズです。
コロイドミル、ホモミキサー、ハイシアミキサー
下記のようにロータ―とステーター(外筒)があり、ロータ―を高速で回転させ、せん断により分散します。
また、コロイドミルとは異なる構造で、ロータ―とステーター間のせん断で分散する機器に、ホモミキサーやハイシアミキサーがあります。
例えば、下記のような卓上サイズのラボ機があります。
メディアミル(ビーズミル、アトライター、ボールミルなど)
ボールやビーズのようなメディア(球)を衝突させ、衝撃で分散させます。
メディアの小さい順に、ビーズミル(サンドミル含む)< アトライター < ボールミルと呼ばれ、分散機の構造や衝突メカニズムも異なります。
メディアの大きさに関する特徴は下記です。
・メディアが大きい程、
衝撃力が大きいため、大きく硬い凝集体の解砕や粉砕に向いている
・メディアが小さい程、
衝突頻度が多く、小さい凝集体の解砕に向いている
卓上サイズのメディアミルもあり、ラボ機として使えます。
また、下記のような「シェーカー」を使って、メディアを入れた瓶を振ることで、簡易的なラボ機として使えます。

ジェットミル、高圧ホモジナイザー
ジェットミルは、下記3つの方式に分類されます。
- 液ー液 衝突方式
- 液―衝突板 方式
- 高圧ホモジナイザー
衝突方式の物は主に「衝撃」系の分散機で、高圧ホモジナイザーは主に「せん断」系で「衝撃」「キャビテーション」が機種により関係する分散機です。
高圧ホモジナイザーと聞くと、超音波ホモジナイザーをイメージする方もいらっしゃいますが、全く違います。
ジェットミルは、乾式の機器もありますし、高圧ホモジナイザーのことを指す場合もあるため、ややこしいかもしれません。
どの方式でも高圧が必要なため、広い意味では「ジェットミル」と言えます。
こちらのように、卓上サイズのラボ機もあります。
参考文献
分散について学ぶのに役立つおすすめ本は、こちらの記事で紹介しているので是非どうぞ▼

1)小林敏勝「きちんと知りたい粒子分散液の作り方・使い方」p.139等、日刊工業新聞社(2016)
2)中道敏彦「図解入門よくわかる顔料分散」p.51等、日刊工業新聞社(2009)
3)小林敏勝・福井寛「きちんと知りたい粒子表面と分散技術」p.151等、日刊工業新聞社(2014)
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