「分散」「溶解」と聞いても化学以外の分野の方にはピンと来ないのではないでしょうか。
化学において、「分散」と「溶解」には明確な違いがあり、その定義や違いについて、図を使って詳しく解説します。
また、「分散」と混同しがちな「乳化」についても詳しく解説しますので、頭の整理にお役立てください。
この記事を読めば、「溶解」「分散」「乳化」の違いを理解し、用語の意味を化学的に説明できるようになります。
「分散」と「溶解」の違い
「分散」と「溶解」の違いを図で表すと下記のようになります。

違いは、ある物質を入れた際に、その物質がどの程度細かくなるかです。
分子レベルまで細かくなる場合が、「溶解」
分子レベルまでは細かくならない場合が、「分散」です。
この違いを、身近な例を挙げながら、分かりやすく化学的に説明していきます。
分散とは何か
液体*に他の物質を入れた時、 細かい粒が均一に浮遊した状態になること
*液体ではなく、気体・固体の場合も分散と言います。

身近な例としては、泥水やお茶があります。
水に砂を入れて混ぜると、濁った泥水が出来上がりますが、時間が経つと底に砂が溜まりますよね。
同じように、回転寿司のお茶の粉末も、お湯と混ぜた直後は濁っていますが、時間が経つとお茶葉が底に溜まります。
これらは、混ぜた直後は「細かい粒が均一に浮遊した状態」になっており、「分散」していると言えます。
しかし、分散を保つ工夫をしていないため、重力により徐々に沈んでいきます。
一般的に、浮遊状態にある「細かい粒」が大きい程、早く沈んでしまいますが、工夫することで「細かい粒」が沈むのを防ぐこともできます。
本ブログでは「分散」に関する課題について、解決策を提示した記事を多数投稿していますので気になる方はこちらをご覧ください。
分散についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです▼
溶解とは何か
液体に他の物質を入れた時、分子レベルまで均一に混ざり合うこと

分子は、物質の最小単位*だとお考え下さい。 *正確には最小ではありません
小さすぎて目で見えないのはもちろん、普通の顕微鏡でも見えません。
一方、分散は 「細かい粒が均一に浮遊した状態」 ですから、「細かい粒」を顕微鏡で見ることができます。
溶解の身近な例としては、塩水があります。
水に塩を入れて混ぜると、やがて透明になり、時間が経っても塩が底に溜まることはありません。
分散の解説で、浮遊状態にある「細かい粒」が大きい程、早く沈んでしまう、と説明しましたが、
溶解した分子は、小さすぎて、沈むことはありません。
「分散」と「乳化」の違い
「分散」自体は広い意味の言葉で、「分散」の中の分類の一つに「乳化」が含まれます。
注意点としては、「分散」という言葉が使われた場合、それは「固体粒子の分散」を指していることが多々ある、ということです。
この場合、「固体粒子の分散」と「乳化」には明確な違いがあります。

図のように、液体中に浮遊している「細かい粒」が、液体の場合が「乳化」 であり、分散液は「エマルション(乳濁液)」と呼ばれます。
ちなみに、 液体中に浮遊している「細かい粒」が固体の場合、分散液は「サスペンション(懸濁液)」と呼ばれます。
「本来の広い意味での分散」の定義と、「乳化」の定義を比べると下記になります。
液体*に他の物質を入れた時、 細かい粒が均一に浮遊した状態になること
*液体ではなく、気体・固体の場合も分散と言います。
液体に液体を入れた時、 細かい粒が均一に浮遊した状態になること
つまり、乳化とは「本来混ざらない液体同士を、細かい粒にして均一に混ぜた状態」と言えます。
乳化の身近な例としては、マヨネーズ、ドレッシング、牛乳などがあります。
このように、乳化は食品にも広く利用されており、料理の説明で聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
また、リキッドファンデーションのように、「乳化」と「固体粒子の分散」を合わせた液体も数多く存在します。
一部のリキッドファンデーションは、乳化状態にあるエマルションをベースとして、固体である色材やラメが分散されています。
さらに、美容成分や添加剤が溶解していることを考えると、
一部のリキッドファンデーション は「エマルション」であり、「サスペンション」でもあり、「溶解液」でもあると言えます。複雑ですね。
このように、化学の分野では、「分散」と「溶解」を駆使して様々な製品が作られています。
一般的に、「溶解」するのは簡単ですが、「分散」は比較的難しく、知識と経験が必要です。
本ブログでは「分散」に関する記事を多数投稿していますので気になる方はこちらをご覧ください。
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