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【分散液の使い方】混合時の凝集を防ぐ方法~6つの原因とその対策~

分散液を使う際、樹脂(ワニス)や他の分散液と混合すると、凝集物が発生することはありませんか。

または期待していた性能が出ないことはありませんか。それも凝集が原因かもしれません。

本ブログでは、分散液を作る方法について解説してきましたが、実際は分散液を使う人の方が多いでしょう。

そこで、本記事では「分散液の使い方」を徹底解説します。

本記事を見れば下記が分かります。

  • 分散液を正しく使うための基礎知識
  • 混合時に分散液が凝集する原因と対策

ちなみに、本記事の言う「分散液」とは、粒子が液体中に分散した物のことで、懸濁液・サスペンション・スラリーなどと呼ばれることもあります。

目次

分散の基礎

分散液中の粒子が凝集しない理由(分散安定化のメカニズム)

分散の世界では、粒子の凝集を防ぐことを「分散安定化」と言います。

前提知識として「分散安定化のメカニズム」を理解しておくと、凝集の原因を特定し対策を立てやすくなります。

分散安定化のメカニズムを大別すると、「静電反発」と「立体障害」に分けられます。

「静電反発」による分散とは

多くの場合、液中で粒子は下図のように帯電しています。(符号は逆の場合もあり)

静電反発機構(液中の粒子のゼータ電位)

2つの粒子を見たとき、電荷が同じ符号(+と+またはーとー)の場合、反発するというのが静電反発です。

このように静電的な反発力で、粒子の凝集を防ぐのが「静電反発」による分散です。

この場合、分散剤などの添加剤を使用して、静電的な反発力を強くし、分散安定化させることもあります。

そのため、分散液を使う際に、分散剤の効果を阻害する成分があると、静電反発が弱くなり凝集することがあります。

ちなみに、粒子と一緒に移動する電荷の境界部分をすべり面と言い、すべり面の電位は「ゼータ電位」と呼ばれます。

このゼータ電位は測定することができ、非常に重要な指標になります。

基本的に「ゼータ電位」と「分散安定性」には、下記の関係があります

  • ゼータ電位の絶対値が大きければ、静電的な反発力が強く、分散安定性は高い
  • 逆に、ゼータ電位がゼロに近くなると、静電的な反発力が弱く、分散安定性は低い

例えば、元の分散液のゼータ電位と、凝集してしまった分散液のゼータ電位を比べれば、原因が静電的な反発力なのかが分かる場合があります。

「立体障害」による分散とは

高分子の分散剤を粒子に吸着させ、下図のように高分子鎖同士の立体障害効果により、粒子の凝集を防ぐのが「立体障害」による分散です。

立体障害機構(分散樹脂の吸着)

立体障害による分散では、分散剤が粒子に十分に吸着し、溶剤中に良く広がっていることが重要です。

そのため、分散液を使う際に、分散剤の効果を阻害する添加物や溶剤などを加えると、凝集することがあります。

「静電反発」や「立体障害」で分散する具体的な方法については、こちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

混合時に凝集する原因と対策

混合時に凝集する原因は様々です。

ここでは代表的な6つの原因と、その判別方法や対策についてご紹介します。

実際は複数の原因が合わさって凝集することもありますが、それぞれの対策を行えば解決に繋がります。

①.溶剤の拡散

粒子が明らかに凝集している場合(目で見て分かるレベル)、これが原因の可能性があります。

図にすると下記のようになります。

溶剤の拡散による粒子の凝集

粒子の拡散よりも先に、分散液中の溶剤がワニスに拡散し、粒子が取り残される形で凝集します。

局所的に固形分濃度が異常に高くなり凝集するイメージで、これが原因の場合は分散安定化のメカニズムはあまり関係ありません。

特に、固形分濃度の高いワニス(溶剤が少ないワニス)に、固形分濃度の低い分散液(溶剤が多い分散液)を入れた際に起こりやすいです。

対策4選

対策は下記があります。

  1. 混合機のシェアを高くし、分散液を少しずつ添加する
  2. 添加順序を逆にする
  3. ワニスの濃度を下げておく(溶剤を足しておく)
  4. 分散液の濃度を下げておく(溶剤を足しておく)
1.混合機のシェアを高くし、分散液を少しずつ添加する

例えば、ワニスと分散液を混合する際に、ディスパー(ディゾルバー)を使用する場合、回転数を上げてよりシェアがかかる条件で混合することで、凝集を防げることがあります。

※正確には周速を上げる必要があり、回転数を上げる以外に羽を大きくするという手もあります。

この際、分散液を少量ずつ添加することで、添加した分散液に均一にシェアがかかり、凝集を防げる可能性が高くなります。

2.添加順序を逆にする

例えば、ワニスに分散液を加えるのではなく、分散液にワニスを加えるようにします。

その際も「混合機のシェアを高くし、ワニスを少しずつ添加する」ようにすると、より効果的です。

溶剤拡散による凝集には非常に効果的で、試す余地がある場合は一番お勧めです。

3.ワニスの濃度を下げておく(溶剤を足しておく)

溶剤拡散による凝集は、ワニスの固形分濃度>>分散液の固形分濃度のとき起こりやすいため、

ワニスに溶剤を足し、ワニスの固形分濃度<分散液の固形分濃度にするのが効果的です。

4.分散液の濃度を下げておく(溶剤を足しておく)

分散液に溶剤を足すことで、少しくらい溶剤が拡散しても凝集しないようにする狙いがあります。

何らかの理由で、ワニスに溶剤を足せない場合の最後の手段です。

②.分散剤の脱着

「分散の基礎」でご説明したように、分散液には粒子に吸着する「分散剤」が使われていることが多いです。

粒子に吸着している分散剤が脱着すると、粒子は凝集してしまいます。

図にすると下記のようになります。

分散剤脱着による粒子の凝集

混合時に加えた溶剤や樹脂と、分散剤の親和性が良すぎると、粒子に吸着していた分散剤が脱着して溶剤や樹脂の方に行き、粒子の凝集が起こります。

対策3選

対策は下記があります。

  1. 分散剤を増やす
  2. 混合機のシェアを高くし、分散液を少しずつ添加する
  3. 樹脂や溶剤を変える
1.分散剤を増やす

分散剤を増やすことで、分散剤がある程度脱着しても、粒子が凝集しない状態を維持できます。

使用している分散剤が分かる場合はそれを足すべきですが、分からない場合も新たな分散剤を足すという選択肢もあります。

新たな分散剤を足すのは難易度が高いため、他の対策を試した後に行うのがおすすめです。

分散剤の選び方ついてはこちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

2.混合機のシェアを高くし、分散液を少しずつ添加する

分散剤の脱着にも、この対策は効果的です。

凝集する前に粒子の拡散を促すことで、分散剤が少し脱着した状態でも分散安定化する場合があります。

例えば、ワニスと分散液を混合する際に、ディスパー(ディゾルバー)を使用する場合、回転数を上げてよりシェアがかかる条件で混合することで、凝集を防げることがあります。

※正確には周速を上げる必要があり、回転数を上げる以外に羽を大きくするという手もあります。

この際、分散液を少量ずつ添加することで、添加した分散液に均一にシェアがかかり、凝集を防げる可能性が高くなります。

3.樹脂や溶剤を変える

混合時の樹脂や溶剤と、分散剤の親和性が良過ぎて起こる凝集のため、親和性の低い樹脂や溶剤を選択すれば凝集を防げます。

特に、酸・塩基を有する樹脂は分散剤と親和性が高過ぎる可能性があり、注意が必要です。

③.pHの変化

「分散の基礎」で説明した「静電反発」を利用した分散液の場合、pHにより分散性が大きく変わり、凝集することがあります。

この凝集は、水や高極性溶剤で起こる可能性があり、低極性溶剤ではまず起こりません。

粒子と一緒に移動する部分の電位を「ゼータ電位」と言いますが、ゼータ電位はpHによって大きく変化します。

例えば下図のように、pHによってゼータ電位が変わる場合、pHが6前後の領域では粒子は凝集し易くなります。

図2.粒子の等電点と分散
引用:日本化粧品工業連合会「やさしい技術解説 粒子を細かく、均一に

pHとゼータ電位の関係は、pHごとに分散液のゼータ電位を測定することで分かります。

対策2選

対策は下記があります。

  1. pHを変える
  2. 緩衝液を利用する
1.pHを変える

pHが変わることで凝集する場合、pHを維持できれば凝集を防げます。

混合液 (ワニスなど) に、pH調整剤(適当な酸や塩基)を加えておくか、混合時にpH調整剤を加えると良いでしょう。

間違っても、分散液にpH調整剤を加えてはいけません。その時点で凝集します。

2.緩衝液を利用する

原理は1と同じで、pHが変わることで凝集する場合、pHを維持できれば凝集を防げます。

分散液に緩衝作用を付与すれば、混合時のpH変化を抑制し、凝集を防げる可能性があります。

ただし、混合液 (ワニスなど) に対して分散液の量が極端に少ない場合は、この対策は効果がないことが多いです。

④.混合する溶剤との親和性が低すぎる

分散液に使われている分散剤と、混合時に使う溶剤との親和性が低いと、粒子や分散剤が凝集することがあります。

分散液の溶剤と、混合する液の溶剤が違う(混合溶剤なら比率が違う)場合、これが原因の可能性があります。

「 ②.分散剤の脱着 」で解説したように、分散剤と溶剤の親和性高すぎると、分散剤が脱着して粒子が凝集することがあります。

一方、分散剤と溶剤の親和性が低いと、高分子分散剤の分子鎖が丸まってしまい、分散剤としての効果が減り、粒子が凝集することがあります。(分散安定化メカニズムで解説した「立体障害による分散」の効果が減る)

さらに、分散剤と溶剤の親和性が極端に低いと、分散剤が析出してしまい、粒子の凝集だけでなく、分散剤の凝集物も発生することがあります。

分散剤と溶剤の親和性による挙動は下記です。

分散剤と溶剤の親和性別の挙動

1→5の順に「分散剤⇔溶剤」の親和性が高くなっていくとすると、

親和性1:不溶。そもそも分散剤が溶剤に溶けない。

親和性2:白濁。分散剤がミセルやエマルションを形成し、分散効果が発揮されない。

親和性3:分散効果低。分散剤の溶媒和部分が溶剤中に広がらず(分子鎖が丸まる)、分散効果が低い。

親和性4:分散効果大。分散剤の溶媒和部分が溶剤に広がり、分散効果が高い最適な状態。

親和性5:分散効果低。分散剤と溶剤の親和性が高すぎると、分散剤は溶剤側にいる方が安定で、粒子に吸着しにくい。

対策2選

対策は下記があります。

  1. 溶剤を揃える
  2. 分散液を変える
1. 溶剤を揃える

可能であれば、分散液と混合液は全く同じ溶剤を使いましょう。

全く同じにできない場合も、近い極性の溶剤を選んだり、混合溶剤の比率を近づけたりすることで、凝集を防げる場合があります。

特に、SP値やHSP値が近い溶剤を選べば、分散剤との親和性も近いため、凝集を防げる確立が上がります。

2.分散液を変える

分散液によって使用している分散剤や溶剤が違う可能性があり、混合液に合った分散液が見つかる可能性もあります。

見つからない場合は分散液メーカーに相談するのも手です。

最終手段として、本記事の趣旨からは逸れますが、粉を入手し自分で分散する手もあります。

➄.混合する樹脂との親和性が低すぎる

分散液に使われている分散剤と、混合時に使う樹脂との 親和性が低いと、粒子や樹脂が凝集することがあります。

分散剤と混合液の樹脂の親和性が極端に低い場合、分散剤又は混合液の樹脂が析出してしまい、凝集物が発生します。

分散液に使われている分散剤が手に入る場合は、分散剤と混合液 (ワニスなど)を混ぜることで、相性を見ることができます。

透明だったワニスが、分散剤の添加で白濁する場合は、分散剤やワニス中の樹脂が析出している可能性が高いです。

対策2選

対策は下記があります。

  1. 分散液を変える
  2. 樹脂を変える
1. 分散液を変える

分散液によって使用している分散剤が違う可能性があり、混合液に合った分散液が見つかる可能性もあります。

見つからない場合は分散液メーカーに相談するのも手です。

最終手段として、本記事の趣旨からは逸れますが、粉を入手し自分で分散する手もあります。

2. 樹脂を変える

樹脂を変えられるのであれば、分散液に合った樹脂を選択しましょう。

分散液に使われている分散剤が分かる場合は、極性が近い樹脂を選択すると良いでしょう。

また、大前提として、分散剤と反応する官能基を持つ樹脂を選択してはいけません。

最終手段として、本記事の趣旨からは逸れますが、粉を入手し自分で分散する手もあります。

この場合、樹脂と相性の良い分散剤を自分で選べます。

⑥.混合液と反応している

分散液中の粒子や分散剤と、混合液中の樹脂や添加剤が反応することで、分散が崩れて粒子が凝集したり、反応物が析出したりします。

例えば、分散液により、ワニス中の樹脂の硬化反応が促進され、粒子として析出する可能性が挙げられます。

対策2選

対策は下記があります。

  1. 分散液を変える
  2. 樹脂や添加物を変える
1. 分散液を変える

分散液によって使用している粒子や分散剤が違う可能性があり、混合液に合った分散液が見つかる可能性もあります。

見つからない場合は分散液メーカーに相談するのも手です。

最終手段として、本記事の趣旨からは逸れますが、粉を入手し自分で分散する手もあります。

2. 樹脂や添加物を変える

分散液と反応しそうな樹脂や添加剤を、反応しない物に変えましょう。

最終手段として、本記事の趣旨からは逸れますが、粉を入手し自分で分散する手もあります。

この場合、混合液(ワニスなど)と相性の良い粒子や分散剤を自分で選べます。

粒子の分散方法についてはこちらの記事で解説しているので是非どうぞ▼

参考文献

分散について学ぶのに役立つおすすめ本は、こちらの記事で紹介しているので是非どうぞ▼

1)中道敏彦「図解入門よくわかる顔料分散」p.50等、日刊工業新聞社(2009)

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2)小林敏勝「きちんと知りたい粒子分散液の作り方・使い方」p.204等、日刊工業新聞社(2016)

3)小林敏勝・福井寛「きちんと知りたい粒子表面と分散技術」p.90等、日刊工業新聞社(2014)

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